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大阪地方裁判所 昭和48年(ワ)5569号 判決 1977年10月28日

原告 積水化学工業株式会社

被告 株式会社ヨシカワ

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

「被告は原告に対し金二〇〇〇万円及びこれに対する昭和四九年一一月三〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。」との判決及び仮執行の宣言

二  被告

主文同旨の判決

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、次の特許発明(以下「本件特許発明」という。)の特許権者であつた。

名称 成型品離型の方法

出願 昭和三一年六月一二日(特願昭三一―一五三三一号)

公告 昭和三三年七月一二日(特許出願公告昭三三―五一二三号)

登録 昭和三三年一一月二六日(特許番号第二四七一三六号)

特許請求の範囲

「本文に詳記する如く型内に於て賦型された成型品を型から取出すに際し型を分割後成型品が附着せる側の金型に内装したるピンの移動により流体の噴出口を生ぜしめ成型品表面と成型品を附着せる金型面との間に流体を圧入することを特徴とする成型品の離型方法。」

2  本件特許発明は、成型品の離型方法に関する発明である。

まず、特許請求の範囲に、「型内に於て賦型された成型品を型から取出すに際し型を分割後」とあるのは、本件特許発明が金型を用いる成型方法における成型品の離脱方法であること、またその離脱方法は金型を開いて後に(型を分割後)行なわれることを示している。

そして、従来技術では、成型品を金型から離脱せしめるために、金型の内面に押出ピンやあるいはストリツパープレートを装着しておき、それを金型の内面から押出すという方法が用いられていた。

これに対する本件特許発明の構成要件を分説すると次のとおりである。

(一) 金型を開いた際に成型品が付着する側の金型にピンを内装し、

(二) ピンを移動せしめることによつて金型の表面に空気その他の流体を噴出せしめるための噴出口を生ぜしめ、

(三) 噴出口から噴出する流体を成型品の付着している金型面とその面に密着している成型品の面との間に圧入する

ことによつて離型を行なう方法である。

そして、本件特許発明による作用効果は次のとおりである。

圧入された流体は成型品の付着している金型面とその面に密着している成型品の面との間に拡がり成型品を均一な圧力で金型から押離すので、軟質の合成樹脂を用いた成型品、薄肉の成型品、深物形状の成型品あるいは複雑な形状の成型品等の成型においても損傷、変形することなく容易に成型品を金型から離脱せしめることができ、また、離脱に要する時間も従来技術に比べて短縮される等の効果をもたらすことができる。

3  被告は、別紙目録(二)記載のプラスチツク製成型品を製造販売しているが、その製造にあたり使用している金型及び成型品離型の方法は別紙目録(一)記載のとおりである。

4  被告が使用している成型品の離型方法である別紙目録(一)記載の方法は、「型内に於て賦型された成型品を型から取出すに際し型を分割後」行なう離型方法である。

目録(一)に添付した図面及び説明は植木鉢型の容器を成型するための金型を一例として示したもので、内装されているピンは目的とする成型品によつては複数のこともある。

そこで右図面に従つて成型及び離型の方法を説明すると次のとおりである。

成型にあたつては、雌型2と雄型1とは図示の如く組合わされた位置にある。まず、溶融された合成樹脂注入孔13を通つて射出され、雄型と雌型の間に設けられた間隙内に注入される。樹脂が冷却固化すると成型が完了し、雄型1が後退し、金型が開く。雄型1の後退と共に操作バルブ15が作動し、空気圧縮機14から空気導入孔6を通つて圧縮空気が雄型1内に送られる。圧縮空気はピン7を雄型1の表面から押出す(図面では左方へ動かす。)ように作用する。ピン7が金型面から押出され、ピン7の円錐型頭部9が移動すると小径孔4が雄型1の表面に通じて、雄型1の表面に噴出口が生じて圧縮空気が成型品の付着している金型面とその面に密着している成型品の面との間に圧入され、成型品は金型から離脱する。成型品が離脱するとピン7は、緩装されているスプリング8の力により直ちに後退し噴出口は閉じる。

右のように、別紙目録(一)記載の方法は本件特許発明の構成要件(一)(二)(三)をすべて備えており、その作用効果も同一である。

5  被告は、昭和四〇年頃から別紙目録(一)記載の方法を用いて成型品の製造販売をしているが、原告の有していた本件特許権存続期間内である昭和四五年四月から昭和四八年三月末までの間に右方法を用いて製造販売した別紙目録(二)記載の成型品類の売上高は総計約一四億円である。本件特許発明の通常の実施料率は販売価格の三パーセントであるから、原告は右期間中における被告の特許権侵害行為によつて四二〇〇万円の損害を蒙つたことになる。被告の右行為は、別紙目録(一)記載の方法が本件特許発明の技術的範囲に属することを知り、もしくは過失によつて知らずになされたのであるから、原告は被告に対し四二〇〇万円の損害賠償請求権を有するのである。

6  仮に被告が原告主張の離型方法を用いず、自ら主張する後記離型方法を用いているとしても、それは本件特許発明の技術的範囲から免れることのみを目的とする方法であつて、何らの技術的意義を有しない方法であるから、迂回方法として本件特許権の侵害を構成することを免れるものではない。

すなわち、被告主張の方法は、突出し用ピンと圧縮空気の噴出口とを別々に設け、成型操作を行なうにあたり圧縮空気の噴出とピンの移動とを連繋せしめることによつて、ピンの移動と共に、移動によつて生じた開口部から圧縮空気が噴出し、両者の自動的連繋によつて成型品を離型するという本件特許発明と同一の作用効果を得ようとするものである。しかし、現実には成型品毎にその金型に設けられている突出し用ピンと圧縮空気の噴出口の配置が異なり、成型品の形状、大きさ、肉厚等が異なり圧縮空気の圧力が異なるからピンと圧縮空気との連繋を操作条件の選定によつて行なうには、多くの試行錯誤を重ねるという全く無駄な手数を必要とする。従つて、多くの試作と失敗を繰返した暁には、ある成型品について適当な操作条件を選定しうるかも知れないが、しかし、ある成型品について得られたかかる条件は成型品の大きさ、形状が異なれば、もはや全く役に立たない。

従つて、被告の主張する離型方法であつても、迂回方法として本件特許権の技術的範囲に含まれるものといわなければならず、原告は被告に対し右5と同様の理由により四二〇〇万円の損害賠償請求権を有するのである。

7  よつて、原告は被告に対し右損害の内金二〇〇〇万円及びこれに対する昭和四八年九月一四日付請求の趣旨拡張申立書陳述の日の翌日である昭和四九年一一月三〇日から支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  被告の答弁

1  請求原因1の事実は認める。

2  請求原因2のうち本件特許発明が成型品の離型方法に関する発明であつて、その特許請求の範囲に原告主張の記載のあることは認めるが、その余の主張は争う。

3  請求原因3のうち被告が別紙目録(二)記載のプラスチツク製成型品を製造販売していたことは認めるが、その製造にあたり使用していた金型及び成型品離型の方法が別紙目録(一)記載のとおりであることは否認する。被告は、後記被告の主張1に記載するとおり別紙イ、イ′、ロ、ハ各号の説明書及び図面記載の離型方法を用いて別紙目録(二)記載の成型品を製造販売していたものである。

4  請求原因4の主張は争う。

なお、本件特許発明は後記被告の主張2(六)で被告が主張するようにその公報記載の実施例と一致する対象に限定して解釈すべきところ、本件特許発明の公報記載の実施例と別紙目録(一)記載の方法とを比較すると、前者ではピンの移動により流体の噴出口を生ぜしめるに際し、そのピン移動の手段としてピンの一端に押出板を衝突させているのに対し、後者ではピンの移動はピンの一端に流体を作用させて行なうものであつて、両者はピンの移動手段を異にしているから、後者は本件特許発明の技術的範囲に属さないものというべく、原告の主張はそれ自体失当である。

5  請求原因5の事実は争う。

6  請求原因6の主張は争う。

7  請求原因7の主張は争う。

三  被告の主張

1  被告の使用している離型方法は、その成型品の種類によつて異なり、別紙目録(二)の番号1のママペール(七〇型を除く。)、同2のホームボツクス、同3のコンテナー、同4のYK衣裳函、同7のベビーバスは別紙イ号の説明書及びその図面記載の離型方法(以下「イ号の方法」という。)を、同目録(二)の番号1のママペール七〇型は別紙イ′号の説明書及びその図面記載の離型方法(以下「イ′号の方法」という。)を、同目録(二)の番号6の丸型洗桶、同10の絵付湯桶は別紙ロ号の説明書及びその図面記載の離型方法(以下「ロ号の方法」という。)を、同目録(二)の番号5のYK洗桶、同8のDX丸型湯桶、同11のYKカラーウエアーいれこ三点セツト、同12の丸型絵付ウエアーは別紙ハ号の説明書及びその図面記載の離型方法(以下「ハ号の方法」という。)を用いている。

(一) 右被告の離型方法の構成は、次のとおりである。

(1) イ、イ′各号の離型方法の構成

(a) 型内において賦型された成型品を型から取出すに際し型を分割後、

(b) 成型品が付着せる側の金型に内装した二種のピンのうち、右金型に固定不動とされた一方の空気案内用ピンの周縁にあつて金型に設けた空隙から流体を噴出させるとともに、他方の突出し用ピンを突出させ、

(c) 成型品表面と成型品を付着せる金型面との間に流体を圧入するとともに突出し用ピンで成型品を突出す。

(2) ロ号の離型方法の構成

(a′) 型内において賦型された成型品を型から取出すに際し型を分割後、

(b′) 成型品が付着せる側の金型に内装した突出し用ピンの移動により、成型品を突出すとともに突出し用ピンの周縁にあつて金型に設けた常時開口の空隙から突出しピン用シリンダ内の流体を排出させ、

(c′) 成型品の表面と成型品を付着せる金型面との間に流体を圧入するとともに突出し用ピンで成型品を突出す。

(3) ハ号の離型方法の構成

(a″) 型内において賦型された成型品を型から取出すに際し型を分割後、

(b″) 成型品が付着せる側の金型に内装した突出し用ピンと金型外部に設けたストリツパープレートの移動により、成型品を突出すとともに突出し用ピンの周縁にあつて金型に設けた常時開口の空隙から突出しピン用シリンダ内の流体を排出させ、

(c″) 成型品の表面と成型品を付着せる金型面との間に流体を圧入するとともに突出し用ピンとストリツパープレートで成型品を突出す。

(二) 本件特許発明の構成と被告の離型方法の構成との対比

(1) 本件特許発明の構成を分説すると次のとおりである。

(A) 型内において賦型された成型品を型から取出すに際し型を分割後、

(B) 成型品が付着せる側の金型に内装したピンの移動により流体の噴出口を生ぜしめ、

(C) 成型品表面と成型品を付着せる金型面との間に流体を圧入すること。

(2) 右のように分説した本件特許発明の構成と前記被告の離型方法の構成とを対比すると、本件特許発明の構成要件(B)と被告のイ、イ′、ロ、ハの各号の離型方法の構成(b)、(b′)、(b″)とは全く相違している。

すなわち、本件特許発明の構成要件(B)は、「ピンの移動により流体の噴出口を生ぜしめる」ものであるのに対し、イ、イ′号の構成(b)は、金型に固定させる空気案内用ピン周縁の、はじめからあいている金型に設けた空隙から流体を噴出させるものであり、ロ、ハ号はピンの移動により流体の噴出口を生ぜしめて流体を噴出させるのではなく、ピンの移動時に、常時ピン周縁の金型に開口した空隙から空気を排出させるものである。

この点について、具体的に吟味すると、本件特許発明は、「ピンの移動によつて流体の噴出口を生ぜしめ」るもので、ピンは成型品を直接突出すためのものではなく、流体の噴出口を生成するために設けられたものである旨限定されており、これが本件特許発明における離型方法の重要にして必須の構成要件であることがその明細書の記載から明白である。これに対してイ、イ′号の場合ピンは移動することによつて流体(圧縮空気)の噴出口を生成するために設けられたものではない。従つて、イ、イ′号に供された二種のピンはいずれも本件特許発明に必須の右構成要件を欠如しており、流体(圧縮空気)の具体的噴出構造ないし送入の機構が全く異質である。

また本件特許発明は、成型品表面と成型品の付着せる金型面との間に圧入された流体によつて成型品に均一な圧力を加えてこの流体により離型を行なういわゆるエヤー出し法であるのに対し、イ、イ′各号の場合成型品は突出し用ピンによつて突出されるいわゆるピン出し法である。従つてイ、イ′各号は本件特許発明と本質的に異なる範疇に属する別種の形式のものである。

さらに、本件特許発明が「ピンの移動により流体の噴出口を生ぜしめ」るという具体的噴出手段を採用した所以は、その明細書の発明の詳細な説明の項に特記されているとおり「金型のコアー表面に流体の噴出口を常時設けるときは樹脂が噴出口に流入する故」である。この意味から「成型の際に噴出口を閉じ、離型の際に充分な量の流体を噴出する」ために右構成要件を採用したものである。

これに対して、イ、イ′号では、空気案内用ピンを廻る如く空気案内孔が常設されており、該空気案内孔は成型時及び離型時の何れを問わず常時移動側金型の表面から約〇・〇一~〇・〇三ミリメートルの口径の空隙のもとにあらかじめ開口しているもので、この開口空隙はその限定数値によつて溶融樹脂材料が成型時に金型側へ侵入することを許さず、真空解除用空気の送入のみを許すものとされているのであり、従つてそもそも本件特許発明のような右問題点及びこれを解決するための右構成要件を具備する必要が全くないのである。

ロ号、ハ号の方法もいずれもピン出し法であつて本件特許発明のエアー出し法とは別種の離型方法である。

(3) 次に、イ、イ′各号の空気案内孔、ロ、ハ各号の空隙がいずれも約〇・〇一ないし〇・〇三ミリメートルの口径とされ空気の通過は許すが溶融樹脂材料の通過を許さないものと設定されているのは、昭和四〇年頃すでに完成した設計事項として公知となつていた技術手段によつているのである。

すなわち、特許出願公告昭三五―一六五八一号公報には成型品の離型技術に関して「成型原料の通行は許さないが空気の通行は許す間隙e」が百分の一ないし百分の三ミリメートル程度のものとして掲載されていたものであり、その後の公報にもこのことは多数掲載されていたから、すでに昭和四〇年頃には完成していた技術手段ということができる。

2  本件特許発明はその出願前すでに公知の技術手段として広く一般の公共財産と化していたものである。

(一) 本件特許発明の技術的構成は、その出願前にアメリカで頒布され、昭和一一年五月一一日特許局陳列館に受入れられていたアメリカ特許第二〇二三〇〇二号明細書(乙第二号証)に開示の発明と同一で、公知であつたものである。

(1) すなわち、右アメリカ特許明細書に記載されたものは、成型品、主としてタイヤの離型方法に関するもので、これには一対の金型10、11のキヤビテイ12内で加硫されたタイヤ13を金型から取出すに際し、型の分割と同時又は分割後に金型10、11内に内蔵されたバルブ21を作動させて圧縮空気の噴出口を生成し、同噴出口を通じてタイヤ13と金型面との間に圧縮空気を送入することにより、タイヤ13を離脱させるものが記載されている。

(2) 右を本件特許発明と対比すると、右アメリカ特許発明における金型10、11は本件特許発明の固定側及び移動側の両金型に相当し、又同様にしてバルブ21はピン又は弁体に該当することは疑いない。この公知発明もバルブ21の移動によつて圧縮空気を成型品であるタイヤ13と金型面との間へ圧入することにより同圧縮空気でタイヤを離型させる点で本件特許発明と同一であることが明らかである。

(二) また、本件特許発明の技術的構成は、その出願前にイギリスで頒布され、昭和三〇年一〇月三一日に大阪府立図書館に受入れられたイギリス特許第五二七四〇六号抄録明細書(乙第三号証の一、二)及びその完全明細書(乙第四号証)に開示の発明と同一である。

(1) すなわち、このイギリス特許明細書に記載されたものは、ボールその他の中空状ゴム製品を成型する装置の改良に関するものであり、これには上下分割された一対の金型部分14、15の接合面に各々半球状の凹窩21、22が形成され、この凹窩21、22内にボール等の成型品61を形造る球状のコアー24が配設されていて、成型を済ませた後コアー24から成型品61を難脱するに際して型開きを行なつて後空気供給具59から圧縮空気を圧入して弁体30を押し上げ、該弁体30とコアー24表面との間に圧縮空気の噴出口を生成し、該噴出口から送入される圧縮空気によつて成型品61をコアー24表面から離脱させる方法が記載されている。

(2) これと本件特許発明とを対比すると、右イギリス特許発明のコアー24は、本件特許発明における成型品が付着せる側の金型に相当するものであり、同様にして弁体30はピン1、1′に該当する。このイギリス特許の場合にも弁体30の圧縮空気による押圧移動動作によつて流体(圧縮空気)の噴出口を生じさせ、この噴出口から成型品61とこれが付着する金型としてのコア-24表面との間へ流体を圧入し、この流体で成型品61をコアー24から離型させるものである点で本件特許発明と全く同一の離型方法である。

(三) また、昭和二三年五月一日日本国立図書館に受入れられたアメリカ商務省特許局発行のオフイシヤル・ガゼツトに掲載されているアメリカ特許第二、三九六、四〇六号の特許明細書にも、本件特許発明と同一の離型方法が記載されている。

すなわち、右アメリカ特許発明は弾性プラスチツク材製中空品の成型金型に関するもので、上下金型10、11とコアー30との間のキヤビテイ15内で成型された成型品の離型方法として、固定側の下型10に対し可動側の上型11を分割状に離して型開きを行なつて後に、コンプレツサーからの圧縮空気をチユーブ8を経て孔31へ送込み、コアー30内のバルブ35を押上げ、テーパー状の同バルブ35によつて成型品の内側頂面とこれが付着するコアー30との間へ右空気を圧送し、もつて成型品を離型させるものを開示している。従つて、右バルブ35は本件特許発明のピンないしバルブと全く同一のもので、それ自体の移動によつて流体(空気)の噴出口を生成する点を含み、本件特許発明の要旨全部を掲載している。

(四) また、昭和三〇年一〇月一五日発行の月刊雑誌「ラバーダイジエスト」一〇月号の「射出成型用ポリエチレン“ダウ・ポリエチレン九〇〇M”」というテーマの記事の「五、金型設計<3>成型品の突き出し」の項目中に成型品の離型方法について記載されているが、この説明により当業者ならば、本件特許発明のように金型に内装したピンの移動により流体の噴出口を生ぜしめて成型品の突出しを行なうものであることを十分窺知することができる。

(五) 以上のとおり、本件特許発明は右四件の刊行物によつて確認されるように、従来公知より進んでもはや周知・慣行の技術手段をその内容としている。このような完全公知の技術は本来何人も自由にかつ適法に実施できるものであるところ、原告はこのことを窺知しているにもかかわらず、本件訴訟を提起しているのであるが、かかることは権利の濫用というべきである。

(六) また、右のように出願前において完全公知であつたような特許請求の範囲の解釈については、その特許公報に記載されている字義どおり狭く限定して解釈すべきであるから、本件特許発明についても、その公報に記載された実施例と一致する対象に限られ、均等物の変換も許されないものとして最も狭く限定すべきである。従つて、右公報の第一図と第二図に記載の第一実施例、第三図と第四図に記載の第二実施例そのものが本件特許発明であると解すべきである。

四  被告の主張に対する原告の答弁

被告の主張1、2はすべて争う。

第三証拠関係<省略>

理由

一  原告が次の特許発明の特許権者であつたことは当事者間に争いがない。

名称 成型品離型の方法

出願 昭和三一年六月一二日(特願昭三一―一五三三一号)

公告 昭和三三年七月一二日(特許出願公告昭三三―五一二三号)

登録 昭和三三年一一月二六日(特許番号第二四七一三六号)

特許請求の範囲

「本文に詳記する如く型内に於て賦型された成型品を型から取出すに際し型を分割後成型品が附着せる側の金型に内装したるピンの移動により流体の噴出口を生ぜしめ成型品表面と成型品を附着せる金型面との間に流体を圧入することを特徴とする成型品の離型方法。」

二  被告が別紙目録(二)記載のプラスチツク製成型品を製造販売していたことは、被告の認めるところであるが、原告は、被告が右製造に用いていた成型品離型の方法は別紙目録(一)記載の方法であると主張するのに対し、被告はこれを否認し、右製造に用いている離型の方法はイ、イ′、ロ、ハ各号の方法であると主張して争うので、この点について判断する。

原告主張の別紙目録(一)記載の離型方法の要旨は、圧縮空気の空気圧によつて空気噴出用ピンを押圧してそのピン頭部を金型表面に僅かに突出させることによつてピン頭部とピン挿入孔内壁との間に隙間を生じさせ、その隙間から空気を金型表面と成型品表面との間に圧入して成型品を離型させる方法であると解され、その方法には、空気噴出用ピンを突出させることによつて空気噴出口を生じさせるとの構成を含むことが明らかである。

しかし、本件においては以下詳細に判示するとおり全立証によつてもいまだ被告が原告主張の期間空気噴出用ピンを突出させることによつて空気噴出口を生じさせるとの構成を含む離型方法を用いていたとは認められない。すなわち、

1  証人畑田幸夫、同吉田寿之の各証言中には、被告貸与の成型機を用いて被告製品の成型の下請をしていた訴外大阪矢吹工業株式会社の工場において昭和四六年暮頃から昭和四八年一一月頃までの間に訴外会社が被告の指導のもとに別紙目録(二)の番号4のYK衣裳函を製造するにあたり別紙目録(一)記載の離型方法を用いていたのを目撃した旨の供述部分があるが、両証人ともその成型機の金型の構造を子細に点検したり、成型品の付着していない状況のもとで空気を噴出させてその機構を点検したわけではなく、雄金型に成型品が付着したままのため空気噴出、ピン突出しの模様は成型品に隠れて見えず、わずかに成型品が離脱された後雄金型と雌金型が合体するまでの短時間に雄金型の表面を目撃しえたにとどまるため供述内容にもあいまいな部分があり、空気が噴出する個所のピンが突出されていたか否か、射出成型中にはその噴出口が当該ピンによつて閉じられていたか否かというようなその確認が必ずしも容易でない現象を右のような状況下で正確に現認できたとは到底考えられないし、また原告主張の期間後ではあるが昭和四九年一〇月三〇日に当裁判所が施行した被告会社大和高田工場におけるYK衣裳函かつらぎの成型機についての検証の結果によれば、同成型機では射出成型時にも空気噴出のための空隙が金型面に開口し、その個所にあるピンは固定不動に取付けられていることが認められるので、結局、右各証言を採用することはできない。

2  甲第三号証(原告会社奈良工場成型課の太田忠宏作成の昭和四八年六月一〇日付鑑定書)には、別紙目録(二)の番号1のママペール七〇型は、ピンの作動により圧縮空気を噴出させる方法を用いて離型させた製品である旨記載されているが、その根拠は、成型品に残されたピンの痕跡によつて推定したことに帰するところ、証人太田忠宏、同村上健吉の各証言によればピンの作動によつて圧縮空気の噴出口を生成して圧縮空気を噴出し離型したピンの痕跡か、ピンの作動のない常時開口の噴出口から圧縮空気を噴出して離型したピンの痕跡であるかの判別は結局不可能であるというのであるから、右推定をたやすく信用することはできず、従つて甲第三号証の記載内容も採用することはできない。

3  甲第四号証(原告会社第二事業本部日用品事業部の太田忠宏及び同奈良工場技術課製品設計係奥田啅一作成の昭和四九年五月一七日付実験報告書)には、別紙目録(二)の番号1のママペール四五型及び番号4のYK衣裳函かつらぎは、被告開示のイ、イ′各号の離型方法によつては製造することができない旨記載され、証人太田忠宏の証言により甲第四号証の実験によつて得られた成型品であると認められる検甲第三ないし第六号証によれば、右実験の結果ではその目的とする製品が得られていないことが認められる。

しかし、かりに右のような結果をそのまま肯認したとしても、そのことのゆえに直ちに被告製品が原告主張にかかる別紙目録(一)の方法によつて離型されたと即断できないことは多言を要しないところである。のみならず、甲第四号証の実験条件に関する記載部分及び証人太田忠宏の証言によれば、右実験は原告の金型を改造したものを使用し、原告の材料、原告における通常の射出成型条件のもとで、被告が圧縮空気制御回路の説明及びその回路図を追加開示(本件記録によれば、被告は昭和五二年五月二〇日付準備書面によつてはじめてこの点を追加開示したことが明らかである。)する前の段階で原告の理解するイ号方法によつて行なわれたものであることが認められるから、前記実験をもつて被告の主張するイ号の離型方法に関する実験ということはできないと解されるほか、さらに成立に争いのない乙第一九号証(奈良県工業試験場長守川喜郎作成の昭和五一年六月二二日付報告書)、証人小引茂夫、同中橋等の各証言によれば、被告の開示したイ、イ′号の離型方法の具体的な作業過程は、型開き後タイマーにより空気案内孔に通する電磁弁が開き減圧弁で約七kg/cm程度に減圧された圧縮空気が空気案内孔を通じてその開口空隙より噴出しはじめ、右電磁弁が働いてから数秒後(例えば一ないし四秒)タイマーにより突出し用ピンに通ずる電磁弁が開き減圧弁で約三kg/cm程度に減圧された圧縮空気が右ピンの背面を押圧して右ピンを突出して成型品を押出し離型を完了するのであり、空気案内孔を通じての圧縮空気の噴出と突出し用ピンの突出しとの時間的前後関係、その各押圧力の差異程度が極めて重要であつて、その調整如何によつて製品の良否に大きな影響をもたらすことが認められるにもかかわらず、原告が前記実験をするにあたつてこの点について配慮した形跡は認められない。結局、甲第四号証、検甲第三ないし第六号証を原告主張の右事実を裏づける証拠として採用することはできない。

4  甲第五号証(前記両名作成の昭和四九年六月二〇日付実験報告書)には、別紙目録(二)の番号6の丸型洗桶は、ロ号の離型方法によつては製造することができない旨記載され、証人太田忠宏の証言により甲第五号証の実験によつて得られた成型品であると認められる検甲第八、九号証によれば、右実験の結果ではその目的とする製品が得られていないことが認められる。

しかし、かりに右のような結果をそのまま肯認したとしても、そのことのゆえに直ちに被告製品が原告主張にかかる別紙目録(一)の方法によつて離型されたと即断できないことは前示3の場合と同様である。のみならず、甲第五号証の実験条件に関する記載部分及び証人太田忠宏の証言によれば、右実験は原告の金型を改造したものを使用し、原告の材料、原告における通常の射出成型条件のもとで、原告の理解するロ号方法によつて行なわれたものであることが認められるから、前記実験をもつて被告の主張するロ号の離型方法に関する実験ということはできないと解されるほか、さらに本件弁論の全趣旨によれば、ロ号の離型方法においても突出し用ピンの押圧力如何が重要であると認められるところ、原告が右実験をするにあたつてこの点について配慮した形跡は認められない。結局、甲第五号証、検甲第八、九号証を原告主張の事実を裏付ける証拠として採用することはできない。

5  原告が原告主張の期間中に被告が製造販売したとの趣旨で提出し被告製造のものであることについては争いのない検甲第一一号証(ママペール七〇型)と被告がイ号の方法によつて製造したとの趣旨で提出し被告製造のものであることについては争いのない検乙第一号証(ママペール七〇型)、同じく検甲第二号証(YK衣裳函かつらぎ)と検乙第二号証(YK衣裳函かつらぎ)、同じく検甲第一号証(ママペール四五型)と検乙第三号証(ママペール四五型)とをそれぞれ子細比較検討すると、その離型にあたり使用したとみられるピンの痕跡等に若干の差異が認められるが、前掲乙第一九号証、被告製造のものであることにつき争いがなく、証人小引茂夫の証言によれば乙第一九号証の実験によつて得られた成型品(証1ないし3)であると認められる検乙第五号証の一ないし三、証人小引茂夫、同中橋等の各証言によれば、イ、イ′各号の離型方法による場合、使用する金型、材料、射出成型条件が同一であつても、空気案内孔を通じての圧縮空気の噴出と突出し用ピンの突出しとの時間的前後関係、その各押圧力の差異程度の調整如何では、その成型品に生ずるピンの痕跡等に微妙な差異の存することが認められるから、前記検甲、乙号各証にみられるピンの痕跡等によつて離型方法自体も異なるものと即断することはできず、結局右検甲号各証を原告主張の事実を裏づける証拠として採用することはできない。

そして、他に原告主張の事実を認めるに足りる証拠はない。

かえつて、前掲乙第一九号証、証人小引茂夫、同中橋等の各証言、検証の結果、弁論の全趣旨によつて考えると、別紙目録(二)の番号2のホームボツクス、同3のコンテナー、同4のYK衣裳函、同7のべビーバス、同1のママペール(七〇型を除く。)はイ号の離型方法を、同目録(二)の番号1のママペール七〇型はイ′号の離型方法を、同目録(二)の番号6の丸型洗桶、同10の絵付湯桶はロ号の離型方法を、同目録(二)の番号5のYK洗桶、同8のDX丸型湯桶、同11のYKカラーウエアーいれこ三点セツト、同12の丸型絵付ウエアーはハ号の離型方法を、同目録(二)の番号9のDX小判湯桶はロ号またはハ号の離型方法をそれぞれ使用して製造されたものと推認することができる。

以上の理由によれば、被告が別紙目録(一)記載の離型方法を用いていることを前提とする原告の主張は、爾余の判断をするまでもなくその理由がないものといわなければならない。

三  次に、原告は仮定的に被告が別紙目録(二)記載の製品を製造するにあたり、イ、イ′、ロ、ハ各号の離型方法を用いていたとしても、同方法は本件特許発明の迂回方法にほかならないから右方法は本件特許発明の技術的範囲に含まれるものである旨主張するので、この点について判断する。

1  まず、本件特許発明は、前記特許請求の範囲の記載及び成立に争いのない甲第二号証(本件特許公報)の「発明の詳細な説明」の項の記載及び図面の表示からみて、次の構成要素からなる成型品の離型方法であると解することができる。

(A)  型内において賦型された成型品を型から取出すに際し型を分割する。

(B)  成型品が付着する側の金型に内装したピンの移動により流体の噴出口を生ぜしめる。

(C)  右噴出口から成型品の表面と成型品を付着する金型面との間に流体を圧入する。

2  次に、被告のイ、イ′、ロ、ハ各号の離型方法の構成について検討する。

(一)  まず、別紙イ、イ′各号の説明書及びこれに添付された図面によつて考えると、イ、イ′各号の離型方法は、次の構成からなる成型品の離型方法であると認めることができる。

(a) 型内において賦型された成型品を型から取出すに際し型を分割する。

(b) 成型品が付着する側の金型に内装した二種のピンのうち右金型に固定された一方の空気案内用ピンの周縁にあつてキヤビテイに常時開口の空隙から成型品表面と成型品を付着する金型面との間に流体を圧入するとともに、他方の突出し用ピンで成型品を突出す。

(二)  次に、別紙ロ号の説明書及びこれに添付された図面によつて考えると、ロ号の離型方法は、次の構成からなる成型品の離型方法であると認めることができる。

(a′) 型内において賦型された成型品を型から取出すに際し型を分割する。

(b′) 成型品が付着する側の金型に内装した突出し用ピンを突出すとともに突出し用ピンの周縁にあつてキヤビテイに常時開口の空隙から成型品の表面と成型品を付着する金型面との間に突出しピン用シリンダ内の流体を圧入する。

(三)  さらに、別紙ハ号の説明書及びこれに添付された図面によつて考えると、ハ号の離型方法は、次の構成からなる成型品の離型方法であると認めることができる。

(a″) 型内において賦型された成型品を型から取出すに際し型を分割する。

(b″) 成型品が付着する側の金型に内装した突出し用ピンと金型外部に設けたストリツパープレートとを突出すとともに突出し用ピンの周縁にあつてキヤビテイに常時開口の空隙から成型品の表面と成型品を付着する金型面との間に突出しピン用シリンダ内の流体を圧入する。

3  そこで、本件特許発明の構成要素と被告のイ、イ′、ロ、ハ各号の構成とを比較検討する。

(一)  まず、本件特許発明の構成要素(A)と被告のイ、イ′各号の構成(a)、ロ号の構成(a′)、ハ号の構成(a″)とが共通していることは明らかである。

(二)  次に、本件特許発明の構成要素(B)にあたる構成、すなわち、「ピンの移動による流体の噴出口」の生成にあたる構成は、被告のイ、イ′、ロ、ハ各号のいずれにも存しない構成ということができる。なんとなれば、被告のイ、イ′各号の構成(b)、ロ号の構成(b′)ハ号の構成(b″)のいずれにも空隙から成型品の表面と成型品を付着する金型面との間に流体を圧入するという本件特許発明の構成要素(C)に相当する構成を含んではいるが、その空隙はキヤビテイに常時開口しており、一方イ、イ′号の構成(b)中の空気案内用ピンは金型に固定されていて移動することはなく、イ、イ′、ロ、ハ各号の構成(b)(b′)(b″)中突出し用ピンはその突出しによつて新たな噴出口を生成するものでないこと明らかであるから、結局本件特許発明の構成要素(B)の「ピンの移動による流体の噴出口」の生成という構成は、被告のイ、イ′、ロ、ハ各号の構成においては欠如しているといわねばならないからである。

(三)  そこで、本件特許発明の構成要素(B)の本件特許発明の構成要件中における意義について検討する。

成立に争いのない乙第六号証(昭和二三年五月一日に日本国立図書館に受入れられたアメリカ特許局発行のオフイシヤル・カセツト)、乙第一八号証の一ないし四(昭和三〇年一〇月一五日発行のラバーダイジエスト一〇月号)、証人村上健吉の証言によれば、プラスチツク製品の製造業界においては、本件特許発明出願日の昭和三一月六月一二日当時には、一般に成型品を離型させる方法として突出し用ピンを用いる方法、ストリツパープレートを用いる方法のほか圧縮流体(圧縮空気)の噴出を用いる方法も広く知られていたことが認められ、この技術水準を前提として本件公報に記載されている本件特許発明の課題と解決についての記載部分、すなわち、成型品を付着した金型側から成型品を付着した金型面と成型品との間に流体を圧入するに際し金型のコアー表面に流体の噴出口を常時設けるときは樹脂が噴出口に流入するため成型の際に噴出口を閉じ、離型の際に充分な量の流体を噴出できるようにすることを課題とし、その解決のために成型品が付着した側の金型に内装したピンの移動により流体の噴出口を生じさせるようにした旨の記載(本件公報一頁右欄下から三二ないし二一行目)を斟酌すると、本件特許発明は、従来公知の圧縮流体の噴出を用いる離型方法においてピンの移動によつて流体の噴出口を生成せしめる技術思想、換言すれば、前記(B)の構成要素を開発した点に最も重要な意義を有する発明であると理解するのが相当である。

それゆえに、特許庁も成立に争いのない乙第一一号証(昭和三九年判定請求第一三二号事件についての昭和四〇年九月六日付判定)、第一二号証(昭和三九年判定第一三三号事件についての同日付判定)、第一三号証(昭和三九年判定請求第一三四号事件についての同日付判定)、第一四号証の一(昭和三九年判決請求第一四五号事件についての同日付判定)、第一五号証(昭和三九年判定請求第一四六号事件についての同日付判定)、第一六号証(昭和三九年判定請求第一四七号事件についての同日付判定)において、ピンの移動による噴出口の生成という構成要件が本件特許発明の必要不可欠な要件であるとの理由に基づいて、同じく圧縮空気の送入による離型方法を判定対象方法とする各事件につき、それが本件特許発明の技術的範囲に属するか否かを判定していることが認められる。

しかるに、被告のイ、イ′、ロ、ハ各号の離型方法においては、キヤビテイに常時開口する空隙が設けられているが、その空隙の径は約〇・〇一ないし〇・〇三ミリメートルに保たれており、この径は空気の通過は許すが、溶融樹脂の通過は許さない程度のものとして選ばれたものであるところ、成立に争いのない乙第七号証(昭和三三年二月二六日出願にかかる特許公報)、第八号証(昭和四〇年一月八日出願にかかる特許公報)、第九号証(昭和三九年一二月四日出願にかかる特許公報)第一〇号証(昭和三九年四月六日出願にかかる特許公報)によれば、右径の空隙が空気の通過は許すが溶融樹脂の通過は許さないとの技術思想は、昭和四〇年頃にはすでに公知であつたことが認められるから、被告がイ、イ′、ロ、ハ各号の離型方法を用いるにあたつては、もともと本件特許発明のような射出時には噴出口を閉じ、離型時に開口するようにするとの課題はなく、従つてその解決のためのピンを設ける必要はなかつたといわなければならない。

以上の理由によれば、イ、イ′、ロ、ハ各号の構成において本件特許発明の重要な構成要素(B)を欠如していることには技術上十分な理由があるものというべきである。原告は被告のイ、イ′、ロ、ハ各号の方法は本件特許発明の迂回方法であると主張するが、すでに判示したとおりイ、イ′、ロ、ハ各号の方法は本件特許発明の最も重要な構成要素(B)を欠如し、この点の技術手段を何ら用いておらず、これと本質的に異なる技術手段を用いているのであるから、本件特許発明と被告のイ、イ′、ロ、ハ各号の方法とは互いに異なる技術思想を基本としているものといわなければならない。そうすると、被告のイ、イ′、ロ、ハ各号の方法はすでにこの点において本件特許発明の迂回発明たりえないものである。

従つて、被告のイ、イ′、ロ、ハ各号の方法はいずれも本件特許発明の技術的範囲の外にあること明らかであるから、結局原告の仮定的主張は失当で、右主張によつて被告の権利侵害を肯認することはできない。

四  叙上の判断によれば、原告の本訴請求は爾余の判断をなすまでもなくその理由がないのでこれを棄却することとし訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 畑郁夫 小倉顕 北山元章)

目録(一)

(一) 金型の構造

雄型と雌型に分割出来る金型であつて、これを分割した際成型品が附着する側の金型には、スプリングを緩装した空気噴出用ピンが内蔵されていて、ピンの頭部先端面は金型の表面の一部をなす如く、ピン頭部とピン挿入孔内壁との間に隙間を作らないように嵌合しており、ピン挿入孔後方には圧縮空気導入孔が連通し、更にコンプレツサーに通じている構造の金型。

(二) 成型品離型の方法

上記金型において賦型が完了すると雄型と雌型に分割されて金型が開き、それと共に圧縮空気がコンプレツサーから圧縮空気導入孔を通じてピン挿入孔内に送られ、圧縮空気の圧力で、空気噴出用ピンがスプリングの力に抗して金型面から僅かに突出し、ピン頭部とピン挿入孔内壁との間に生じた隙間から空気が金型表面と成型品との間に圧入される成型品離脱の方法。

(三) (一)記載の構造の金型の一例

(イ) 雄金型(1)と雌金型(2)に分割できる金型であつて、これを分割した際プラスチツク成型品が附着する側の雄型(1)の内部には添附図面(A)に記載のとおり、大径孔(3)、小径孔(4)、円錐形孔(5)を形成する。また大径孔(3)には空気導入孔(6)を連通させ、これに空気圧縮機(コンプレツサー)(14)、操作バルブ(15)を連結する。大径孔(3)の底部には蓋部(12)を気密に取付ける。雌型(2)には樹脂注入孔(13)が設けてある。円錐形頭部(9)を備えた空気噴出用ピン(7)を大径孔(3)、小径孔(4)および円錐形孔(5)内に位置させる。

(ロ) 空気噴出用ピン(7)には小径孔(4)の段部と円板(11)の間にスプリング(8)を緩装する。

(ハ) 本金型は、植木鉢型の小型容器の成型用金型である。

(四) 右(三)の金型を用いた場合の離型方法

(イ) 右金型において雌型(2)の樹脂注入孔(13)より合成樹脂を射出し、型内に溶融合成樹脂を注入し、樹脂が型内で自動的に冷却固化して成型が終ると雄型(1)が後退する。それと共に操作バルブ(15)が開放され空気導入孔(6)をへて大径孔(3)内の空気噴出用ピン(7)の円板(11)の後方より圧縮空気が送り込まれる。

(ロ) 圧縮空気はスプリング(8)の力に抗し、円板(11)及びピン(7)を押してスプリング(3)を圧縮し空気噴出用ピン(7)の円錐形頭部(9)が突出し、成型品表面を僅かに押すと同時に円錐形頭部(9)と円錐形孔(5)との間に間隙を生ぜしめる。圧縮空気は右間隙より雄型(1)とこれに附着した成型品表面との間に圧入される。

(ハ) 引き続き送られる圧縮空気は、更にスプリング(8)の力に抗し、円板(11)及びピン(7)を押し、スプリング(8)は一層圧縮され、空気噴出用ピン(7)の円錐形頭部(9)と円錐形孔(5)との間隙はますます大きくなる。

(ニ) かくして圧縮空気の作用により成型品を離型する方法。

目録(一) 添付の図面(A)

目録(二)

別紙に示す

1 ママペール   九〇型 七〇型 四五型 三五型

2 ホームボツクス

3 コンテナー

4 YK衣裳函   大小 浅型 かつらぎ 絵付衣裳函(小)

5 YK洗桶    大中

6 丸型洗桶    大中

7 ベビーバス

8 DX丸型湯桶

9 DX小判湯桶

10 絵付湯桶

11 YKカラーウエアーいれこ三点セツト

12 丸型絵付ウエアー 大中小

以上

<写真省略>

イ号の説明書

1 図面の説明

図面は被告の金型のうち、ホームボツクス、コンテナー、YK衣裳函、ベビーバス及びママペール(70型を除く)の成型に供されたものを示しており、第1図は型締め状態の金型の要部説明図、第2図は離型時の金型要部説明図、第3図は金型へ通ずる圧縮空気の制御回路を示す図面である。

2 金型の構造の説明

図面に於いて、(1)は固定側雌金型、(2)は移動側雄金型で両者(1)(2)は分割でき、第1図示の型締め時に溶融樹脂材料を賦型して成型品(3)を成型する。(4)は移動側金型(2)に内蔵された成型品(3)の突き出し用ピンで、シリンダー(5)内を往復運動する。(6)は突き出し用ピン(4)の端部に固定されたピストンで、その周面はシリンダー(5)の内面に密嵌されており、Oリング(7)で両者(5)(6)の間から圧縮空気が洩れないよう封止されている。

(8)はねじ部、(9)はナットで、このナツト(9)を緊締することによりピストン(6)を突き出し用ピン(4)へ固定している。(10)はシリンダー(5)の端面とピストン(6)との間に装着されたスプリングで、常時突き出し用ピン(4)を圧縮空気導入路(11)側へ押圧するよう付勢されている。(12)はコンプレツサー、(13)は大気に連通する空気抜き孔で、その一端はシリンダー(5)内のスプリング(10)収納個所へ開口されている。尚、(14)はOリングである。

又、移動側雄金型(2)には前記した成型品(3)の突き出し用ピン(4)のほかに、図のような真空解除用空気の送入を目的とする空気案内用ピン(15)も内蔵されている。突き出し用ピン(4)と空気案内用ピン(15)とは各一個宛あり、成型品(3)によつては各々複数個ある場合もある。空気案内用ピン(15)は移動側金型(2)に対しナツト(16)で不動に固定されている。(17)は空気室で、空気導入路(18)を通じてやはりコンプレツサー(12)に接続されている。

(19)はこの空気室(17)と連通するように、空気案内用ピン(15)の周面に穿設された空気案内孔で、常時キヤピテイに開口している。この場合、空気案内孔(19)の開口空隙は約〇・〇一~〇・〇三mmの径に保たれており、空気の通過は許すも溶融樹脂材料の通過を許さないものとして設定されている。

尚、(20)は空気案内用ピン(15)の端部に於けるねじ部である。

3 金型への圧縮空気制御回路の説明

第3図において、(20)はコンプレツサー(12)と移動側金型(2)との間に連結される空気通路で、同通路は途中から分岐して、一方は他端が前記金型(2)の突き出し用ピン(4)の圧縮空気導入路(11)と連結されを第1通路(20a)と、他方は他端が前記金型(2)の空気案内用ピン(15)の圧縮空気導入路(13)と連結される第2通路(20a′)とからなる。前記第1、第2通路(20a)(20a′)にはそれぞれ減圧弁(20b)(20b′)と電磁弁(20c)(20c′)が設けられている。この電磁弁(20c)(20c′)はタイマー(T1)により、弁(20c)と弁(20c′)が同時に、又は弁(20c′)が先に開弁し、少し遅れて弁(20c)が開弁するように設定され、前記タイマー(T1)は別に設けたタイヤー(T2)により制御される。

4 この金型による離型方法の説明

第1図のように、キヤビテイ内へ溶融樹脂材料が注入されて型内で冷却固化して成型が完了すると、移動側金型(2)に成型品(3)が収縮付着したまま型(1)(2)の分割による型開きが行われる。

この型開き途中でタイマー(T2)によりタイマー(T1)に通電され、先ず電磁弁(20c′)が開いて減圧弁(20b′)で約7kg/cm3程度に減圧され第1通路(20a′)の圧縮空気が、空気導入跡(18)を介して空気室(17)に入り、同空気は空気案内孔(19)を通じてその開口空隙より移動側金型(2)と成型品(3)との間へ空気噴出して離型し始める。

前記電磁弁(20c′)が働いてから数秒後(例えば一~四秒)タイマー(T1)により電磁弁(20c)が開き減圧弁(20b)で約3kg/cm3程度に減圧された第2通路(20a)の圧縮空気が空気導入路(11)を介しシリンダ(5)内に入り、ピストン(6)の背面を押圧して突き出し用ピン(4)を突き出して成型品(3)を押し出し離型を完了する。その後圧縮空気はタイマー(T1)の作用で電磁弁(20c)(20c′)が閉じることにより、その送入を停止し、突き出し用ピン(4)がスプリング(10)の弾性復元力により、第1図の元位置へ復帰する。

なお、このさい突き出し用ピン(4)の突出ストロークは圧縮空気圧を減圧弁(20b)で調整することにより、容易に変更できる。

第1図 イ号の金型図面

第2図 イ型の金型図面

第3図 イ型の金型図面

イ′号の説明書

1 図面の説明

図面は被告の金型のうち、ママペール・七〇型の成型に供されたものを示しており、第1図は型締め状態の金型の要部説明図、第2図は離型時の金型要部説明図、第3図は金型へ通ずる圧縮空気の制御回路を示す図面である。

2 金型の構造の説明

図面に於いて、(1)は固定側(雌)金型、(2)は移動側(雄)金型で両者(1)(2)は分割でき、第1図示の型締め時に溶融樹脂材料を賦型して成型品(3)を成型する。(4)は移動側金型(2)に内蔵された成型品(3)の突き出し用ピンで、シリンダー(5)内を往復運動する。(6)は突き出し用ピン(4)の端部にねじ部(7)及びナツト(8)の相互緊締を介し固定されたピストンで、その周面はシリンダー(5)の内面に密嵌されており、Oリング(9)で両者(5)(6)の間から圧縮空気が洩れないよう封止されている。(10)はシリンダー(5)の端面とピストン(6)との間へ装着されたスプリングで、突き出し用ピン(4)を常時圧縮空気導入路(11)側へ押圧するよう付勢されている。(12)はコンプレツサー、(13)は大気に連通する空気抜き孔で、その一端はシリンダー(5)内のスプリング(10)収納個所へ開口されている。(14)は、Oリング、(15)はピストン(6)に植設された突き出し用ピン(4)の規制用ストツパーである。

又、移動側(雄)金型(2)には成型品(3)の突き出し用ピン(4)のほかに、図のような真空解除用空気の送入を目的とする空気案内用ピン(16)も内蔵されている。この空気案内用ピン(16)は移動側金型(2)に対しねじ部(17)とナツト(18)による相互緊締で不動に固定されている。(19)は空気室で、空気導入路(20)を通じてやはりコンプレツサー(12)に接続されている。(21)はこの空気室(19)と連通状態として、空気案内用ピン(16)の周面と移動側金型(2)内面との間に設けられた空気案内孔であり、常時キヤビテイに開口している。この場合、空気案内孔(21)の開口空隙は約〇・〇一~〇・〇三mmの径に保たれており、空気の通過は許しても溶融樹脂材料の通過を許さないものとして設定されている。

3 金型への圧縮空気制御回路の説明

第八図において、(22)はコンプレツサー(12)と移動側金型(2)との間に連結される空気通路で、同通路は途中から分岐して、一方は他端が前記金型(2)の突き出し用ピン(4)の圧縮空気導入路(11)と連結される第1通路(22a)と、他方は他端が前記金型(2)の空気案内用ピン(16)の圧縮空気導入路(20)と連結される第2通路(22a′)とからなる。前記第1、第2通路(22a)(22a′)にはそれぞれ減圧弁(22b)(22b′)と電磁弁(22c)(22c′)が設けられている。この電磁弁(22c)(22c′)はタイマー(T1)により、弁(22c)と弁(22c′)が同時に、又は弁(22c′)が先に開弁し、少し遅れて弁(22c)が開弁するように設定され、前記タイマー(T1)は別に設けたタイマー(T12)により制御される。

4 この金型による離型方法の説明

第1図のように、キヤビテイ内へ溶融樹脂材料が注入されて型内で冷却固化して成型が完了すると、移動側金型(2)に成型品(3)が収縮付着したまま型(1)(2)の分割による型開きが行われる。

この型開き途中でタイマー(T2)よりタイマー(T1)に通電され、先ず電磁弁(22c′)が開いて減圧弁(22b′)で約七kg/cm3程度に減圧された第1通路(22a′)の圧縮空気が、空気導入路(20)を介して空気室(19)に入り、同空気は空気案内孔(21)を通じてその開口空隙より移動側金型(2)と成型品(3)との間へ空気噴出して離型し始める。前記電磁弁(22c′)が働いてから数秒後(例えば一~四秒)タイマー(T1)により電磁弁(22c)が開き減圧弁(22b)で約三kg/cm3程度に減圧された第2通路(22c)の圧縮空気が空気導入路(11)を介しシリンダ(5)内に入り、ピストン(6)の背面を押圧して突き出し用ピン(4)を突き出して成型品(3)を押し出し離型を完了する。その後圧縮空気はタイマー(T1)の作用で電磁弁(22c)(22c′)が閉じることにより、その送入を停止し、突き出し用ピン(4)がスプリング(10)の弾性復元力により、第1図の元位置へ復帰する。なお、このさい突き出し用ピン(4)の突出ストロークは圧縮空気圧を減圧弁(22b)で調整することにより、容易に変更できる。

第1図 イ′号の金型図面

第2図 イ′号図面

第3図

ロ号の説明書

1 図面の説明

図面は被告の金型のうち、丸型洗相及び転付湯桶の成型に供されたものを示しており、第1図は型締め状態の金型の要部説明図、第2図は離型方法の説明図である。

2 金型の構造の説明

図面に於いて、(1)は固定側金型、(2)は移動側金型で、両者(1)(2)は分割できると共に第1図のように、型締め時に溶融樹脂材料を賦型して成型品(3)を成型する。(4)は移動側金型(2)に内蔵された成型品(3)の突き出し用ピンで、シリンダー(5)内を往復運動する。(6)は突き出し用ピン(4)の端部に於けるピストンで、その周面はシリンダー(5)の内面に密嵌されており、両者(5)(6)の間から圧縮空気が洩れないよう封止されている。

又、(7)はシリンダー(5)に連通した状態で移動側金型(2)の中心に形成された通孔で、この通孔(7)内に突き出し用ピン(4)が貫挿されていると共に、突き出し用ピン(4)と通孔(7)との間には約〇・〇一~〇・〇三mmの空隙(8)が常時保たれている。この空隙(8)は空気の通過は許しても溶融樹脂材料の侵入を許さない程度のものとして設定されたものである。(9)はシリンダー(5)の端面とピストン(6)との間に装着されたスプリングで、突き出し用ピン(4)を常時圧縮空気導入口(10)側へ押圧すべく付勢しているものである。圧縮空気導入口(10)は図示省略のコンプレツサーへ接続されている。尚、(11)はピストン(6)の往復運動規制用のストツプリングである。

3 この金型による離型方法の説明

第1図のように、キヤピテイ内へ溶融樹脂材料が注入されて型内で冷却固化して成型が完了すると、移動側金型(2)に成型品(3)が収縮付着したまま型(1)(2)の分割による型開きが行なわれる。

この型開きの後、コンプレツサーから圧縮空気導入口(10)を通じてシリンダー(5)内のピストン(6)背面へ圧縮空気が送り込まれると、突き出し用ピン(4)はこの空気圧によつて第2図のように動かされる。この際スプリング(9)が収納されているシリンダー(5)内個所の残存空気も同時に、予じめ形成された通孔(7)の空隙(8)から成型品(3)と移動側金型(2)との間へ送入される。そして、成型品(3)は突き出し用ピン(4)の移動によつて移動側金型(2)から離型され、突き出されるのである。このようにして成型品(3)の離型が終ると、圧縮空気の送入を停止して突き出し用ピン(4)はスプリング(9)の弾性復元力によつて第1図の元位置へ復帰し、再び型締めが行なわれ、爾後の成型位置へ準備されるのである。

第1図 ロ号の金型図面

第2図

ハ号の説明書

1 図面の説明

図面は被告の金型のうち、YK洗桶、DX丸型湯桶、YKカラーウエアーいれこ三点セツト及び丸型絵付ウエアーの成型に供されたものを示しており、第1図は型締め状態の金型の要部説明図、第2図は離型方法の説明図である。

2 金型の構造の説明

図面に於いて、(1)は固定側金型、(2)は移動側金型で、両者(1)(2)は分割できると共に第1図のように、型締め時に溶融樹脂材料を賦型して成型品(3)を成型する。(4)は移動側金型(2)に内蔵された成型品(3)の突き出し用ピンで、シリンダー(5)内を往復運動する。このピン(4)は成型品(3)によつては複数個ある場合もあり、又移動側金型(2)の中央又は偏心位置に配置されている。(6)は突き出し用ピン(4)の端部にあるピストンで、その周面はシリンダー(5)の内面に密嵌されており、両者(5)(6)の間から圧縮空気が洩れないようになつている。

(7)はシリンダー(5)に連通状態として移動側金型(2)に設けられた通孔で、この通孔(7)内に突き出し用ピン(4)が貫挿されている。(8)は突き出し用ピン(4)と通孔(7)との間に保たれた空隙で、この空隙(8)は約〇・〇一~〇・〇三mmの径を有し、空気の通過は許すも溶融樹脂材料の通過を許さないものとして設定されたものである。(9)はシリンダー(5)の端面とピストン(6)との間に装着されたスプリングで、突き出し用ピン(4)を常時圧縮空気導入口(10)側へ押圧するよう付勢されている。

圧縮空気導入口(10)は図示省略のコンプレツサーへ接続されている。尚、(11)はピストン(6)の往復運動規制用のストップリングである。

又、(12)は移動側金型(2)の端面に摺動可能に取付けられたストリツパープレートで、移動側金型(2)を貫通するロツド(13)により突き出し盤(14)に連結されている。(15)は図示省略の成形機に固定された突き出しロツドで、これに突き出し盤(14)が衝当することによつて突き出し盤(14)の移動を規制するようになつている。

3 この金型による離型方法の説明

第一図のように、キヤピテイ内へ溶融樹脂材料が注入されて型内で冷却固化して成型が完了すると、移動側金型(2)に成型品(3)が収縮付着したまま型(1)(2)の分割による型開きが行なわれる。

即ち、成型の完了と共に移動側金型(2)が移動し、この移動の過程に於いて突き出し盤(14)が突き出しロツド(13)に衝当して停止することにより、突き出し盤(14)とロツド(13)はこの移動側金型(2)の移動方向と相対的に移動し、ストリツパープレート(12)を第2図のように移動させ、成型品(3)を突き出すのである。

この突き出しと同時又は相前後して、コンプレツサーから圧縮空気導入口(10)を通じて圧縮空気をシリンダー(5)内のピストン(6)背面へ送入する。すると、この空気圧によつて突き出し用ピン(4)が第2図のように移動して、成型品(3)を突き出すのであり、この際同時にスプリング(9)が収納されているシリンダー(5)内個所の残存空気も通孔(7)内に保たれた空隙(8)から成型品(3)と移動側金型(2)との間へ送入される。このようにして成型品(3)の離型が終了すると、圧縮空気の送入を停止し、突き出し用ピン(4)はスプリング(9)の弾性復元力により第1図の元位置へ復帰し、又移動側金型(2)も前記と逆方向へ移動されて再び型締めが行なわれ、爾後の成型位置へ戻されるのである。

第1図 ハ号の金型図面

第2図

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